この業界に飛び込んだのは25歳のころでした。以前は製造会社に勤務していましたが、宅建資格の取得を切っ掛けに準大手不動産会社に入社することとなりました。
もちろんバリバリの営業会社で時代柄まだまだブラックな勤務形態が根強く残っていた業界だった事もあり、振り返れば肉体的にも精神的にも辛いことは多かったと思いますが、それ以上にやりがいや、楽しかった事、良かった事が沢山ありました。もちろん様々な、お客様と巡り会えた事が自分自身の人生の肥やしになりましたし、たくさんの思い出を作る事ができました。
我々の仕事の大半は家を買う人、売る人の双方のお客様と接っする事です。購入希望のお客様では、これから前向きな住み替えを検討している方や新婚さん、または子供が大きくなった、子供が増えて手狭になった方など、また逆にスケールダウンを希望される方、買替に伴う売却や、色々訳あっての売却、転勤や帰郷での売却などなど 動機は多数ありますが、この不動産の購入・売却というのは、一般的な何らかの商品を買ってもらう売ってもらう等の、うわべの付き合いだけでは済まなく、自然と話を伺っているうちに、結果お客さんの懐深く入り込んだ状況になり非常にプライベートな内容や心情を見聞きしたりすることとなります。前向きな事柄だけではなく、後ろ向きな事も含めて、様々な状況を目の当たりにし、お客さんと供に喜んだり、また時には同じように悲しんだりすることもあります。
私たちは仕事を通じて、お客さんの様々な人生の縮図を垣間見、そして擦れることで自分自身の人生に投影したりすることもあります。時にはお客さんが反面教師になったりすることもあります。大変失礼な事かとは思いますが、お手本にしたいいい人生、そうでない人生だな、と20代だった私には少なくとも一定の手本のような感覚もありました。
また営業マン時代はお客さんの大半が自分より年上で、親や祖父くらいの年配の方も多いので、色々な世代の話を聞く事が出来ることはも人生勉強の一環です。またこの不動産を通じて人の”業の深さ”という物なのか、人の欲深い面、悪い面、又良い面、人情深い面など、様々な面を感じ得る事ができます。
そういった事柄を十数年間培えた事は自分自身の人間形成や、家族や友達、同僚社員との関係を維持する上で大変役立ったと思っております。
一番うれしく感じる事として、紹介した家や私が間取りを考えて建てた家を購入していただいた過去のお客さんの家の前を、車でたまたま通りがかった時など、家の庭先に子供の砂遊びセットがあるのを見かけると、あの新婚さん子供が出来たのかな?とか、当時あんな小さかった子供が成長して、今乗っているのはあの子の自転車かな?など考えます。
当時より少し傷んだ外壁になっていたとしても、そのかけがえのない時間を、あの家族が、あの家で子供たちと幸せに暮しているのだな、などと想像すると大変心温まる気持ちになり、また、紹介できたことに誇りを感じることができます。